「ツナグ 想い人の心得」は、この世とあの世を仲介する使者(ツナグ)により、死者との再会を実現した登場人物や、使者(ツナグ)の生き様、家族とのかかわりなどを描いた短編集です。
辻村深月さんの紹介
2004年デビュー作「冷たい校舎の時は止まる」は、第31回メフィスト賞受賞。2012年「鍵のない夢を見る」は、第147回直木賞受賞。2018年「かがみの孤城」は、第15回本屋大賞受賞。
ツナグ(2010年11月刊)は、2011年に、第32回吉川英治文学新人賞を受賞しています。ツナグは2012年に映画化されました。
↓「ツナグ」プライムビデオ
「ツナグ」と「ツナグ 想い人の心得」のあらすじ
今回は、2010年11月に出版された前作「ツナグ」と2019年10月に出版された最新作「ツナグ 想い人の心得」の2冊の書評を書きます。
使者(ツナグ)とは
使者(ツナグ)とは、亡くなった人との再会を叶える仲介者です。
使者は、生きている人間から依頼を受けます。物理的にはすでに会うことが不可能になった、死んでしまった人間の誰に会いたいか、依頼を受け、持ち帰って、対象となった死者に交渉します。
使者(ツナグ)は、鏡を所有する人がなります。使者(ツナグ)になれるのは、この世にただ一人。祖母の渋谷アイ子から主人公の渋谷歩美に引き継がれます。死者との交渉は、
月の下で手をかざし、鏡の上に光の粒が集まるようにして現れる死者たちと交渉を行う。
使者(ツナグ)のルール
・依頼人が死者に会えるのは一生に一度一人だけ。
・一人の死者に対して会えるのは一人の依頼人だけ。
・死者が、生きている人に会える機会は一度だけ。
・死者は会いたい人を指名出来ない。
・死者は面会を断ることが出来る。
・会う日は、基本的に月に一回満月の夜。
・満月の夜は、一番面会時間が長い。
・雨が降ると、面会時間が短くなる。
・会えるのは、日の入りから日の出までの一晩だけ。
・会えるのは、19時~翌朝6時まで。
・使者は生きている人間から依頼を受ける。
・使者は報酬を受け取らない(無料)。
・使者の役目は代々受け継がれる。
・使者の力を持つものはこの世に一人だけ。
・使者は、自分が会いたい死者とは面会出来ない。
・使者は、鏡を使って死者を呼び出す。
・使者と鏡は契約を結ぶ。
・使者以外のものが鏡を見ると死んでしまう。
・使者以外のものが鏡を見ると、使者も死ぬ。
・その死に方は苦しいものとなる。
使者(ツナグ)秋山家家系図(相関図)
渋谷歩美…使者(ツナグ)。物語の主人公。
渋谷アイ子…歩美の祖母。歩美に使者の役目を引き渡す。
渋谷亮…歩美の父。鏡を見てしまい、悲惨な死をとげる。
渋谷香澄…歩美の母。 〃 〃
渋谷朱音…歩美のいとこ。
秋山定之…歩美の大叔父。祖母の兄。
秋山杏奈…秋山家当主。8歳。
ツナグ(2010年11月刊)
渋谷歩美は高校生。祖母は75歳。歩美は、使者(ツナグ)として見習いの日々を送っています。
アイドルの心得
長男の心得
親友の心得
待ち人の心得
使者の心得
主な登場人物
アイドルの心得
主人公
平瀬愛美…主人公。27歳。平凡なOL。家族に恵まれず、寂しい人生を送っている。
水城サヲリ…元キャバ嬢。芸能人。急性心不全で死亡。
柚木…愛美の同僚。愛美にタカったり、仕事を押し付けたりする。
長男の心得
主人公
畠田靖彦…主人公。畠田家の跡取り。頑固で融通が利かない。
畠田ツル…靖彦の母。故人。
畠田祥子…靖彦の妻。
畠田太一…靖彦の息子。大学三年生。21歳。おっとりしている。
畠田トキ…ツルの妹
畠田久仁彦…靖彦の弟。人当たりがいい。
畠田裕紀…久仁彦の息子
畠田美奈…久仁彦の娘
親友の心得
主人公
嵐美砂…高校生。御園と双子のように仲が良い。
御園奈津…嵐の同級生。歩美に想いをよせている。交通事故で死亡。
朝倉先輩…嵐と御園の演劇部の先輩。
待ち人の心得
主人公
土谷功一…ブラック企業で働くワーカホリック。失踪した恋人を想い続けている。
日向キラリ…本名「鍬本輝子」。功一と同棲中の婚約者。突然失踪する。
大橋…功一の同僚。
使者の心得
主人公
渋谷歩美…使者(ツナグ)。
渋谷アイ子…歩美の祖母。
渋谷亮…歩美の父。
渋谷香澄…歩美の母。
渋谷朱音…歩美のいとこ。
秋山定之…歩美の大叔父。
ツナグ 想い人の心得(2019年10月刊)
渋谷歩美が大学二年の年に祖母は他界。歩美は、祖母から使者(ツナグ)を引き継いで7年目。大学を卒業した後、代官山にある「つみきの森」という木材を使ったおもちゃを扱うメーカーに就職します。本業の傍ら、使者(ツナグ)の活動をしています。
プロポーズの心得
歴史研究の心得
母の心得
一人娘の心得
想い人の心得
主な登場人物
プロポーズの心得
主人公
紙谷ゆずる…かけだしの俳優。特撮ヒーローのブルー役。美砂に想いをよせている。
久間田市郎…ゆずるの父。故人。
嵐美砂…前作「親友の心得」の主人公。かけだしの女優。
隼多…7歳の子役。
三代サナ…特撮ヒーローのピンク役。
高杉…特撮ヒーローのブラック役。
紙谷真亜子…ゆずるの母。
歴史研究の心得
主人公
鮫川幸平…公立高校の元校長。80歳代。上川岳満を研究している。
上川岳満…架空の歴史上の人物。
伊村社長…「つみきの森」の社長。
大将夫婦…木製のおもちゃを作っている「鶏野工房」のオーナー夫妻。
奈緒…大将夫婦の一人娘。歩美の3歳年上。歩美の片思いの相手。
母の心得
主人公
重田実里…芽生の母親。次女を妊娠している。
重田芽生…重田家の長女。6歳。海で溺れて死亡。
重田彰一…実里の夫。
主人公
小笠原時子…瑛子と弘子の母親。74歳。
小笠原瑛子…26歳で乳がんで死亡。
小笠原弘子…瑛子の妹。
ビルクナー氏…瑛子の夫。ドイツ人。
一人娘の心得
主人公
奈緒…大将夫婦の一人娘。歩美の3歳年上。歩美の片思いの相手。
大将夫婦…木製のおもちゃを作っている「鶏野工房」のオーナー夫妻。大将が心臓発作で急逝。
伊村社長…「つみきの森」の社長。
想い人の心得
主人公
蜂谷茂…85歳。元袖岡の奉公人。絢子に想いをよせている。絢子に面会を何十年も断られ続けている。
袖岡絢子…高級料亭「袖岡」の令嬢。16歳で逝去。
主人公
渋谷歩美…「つみきの森」社員であり、使者(ツナグ)。
奈緒…「鶏野工房」の経営者の娘。修行の為、ドイツ留学を希望。
小笠原時子…本屋でバッタリ奈緒と歩美に会う。
「ツナグ」と「ツナグ 想い人の心得」の考察
本歌取りとツナグ
歌の世界に、既存の歌の一部を取り入れてその歌を連想させるようにしながら奥行を持たせる”本歌取り”という文化がある
上杉謙信が少年時代の恋の思い出を詠んだとされる歌
つらかりし 人こそあらめ 祈るとて 神にもつくす わが心かな
ツナグで登場する架空の人物「上川岳満」の恋の歌
恋ひわびて 君こそあらめ 祈るとて 見てもさてある 身ぞ悲しかり
上杉謙信が詠んだ歌から「人こそあらめ」と「祈るとて」を一部拝借(本歌取り)して、上川岳満が自身の歌を詠んでいます。
「本歌取り」というキーワードが「ツナグ」と関連して、本のストーリーがまるで「本歌取り」のように、一部の言葉を取りれて、別のストーリーにつなげる(ツナグ)という著者の言葉遊び的なものを感じます。
本の構成は、一話ずつ完結する形となっていて、それぞれの章で主人公が変わります。ですが、登場人物は、別の話にクロスオーバーして、チョイ役で登場します。
「ツナグ」のタイトル名の通り、話の内容もつながっています。
最新作「ツナグ 想い人の心得」の「プロポーズの心得」の章は、前作「ツナグ」の「親友の心得」の章の主人公「嵐美砂」のその後のストーリーとなっています。前作では高校生だった嵐美砂も、最新作では女優となっています。
最新作「ツナグ 想い人の心得」の「母の心得」の章と「想い人の心得」の章は、「ドイツ語」というキーワードで登場人物がつながっています。まるで「本歌取り」のように。
「母の心得」の章に登場する小笠原時子は、「想い人の心得」の章に、通りがかりの人物として、チョイ役で登場します。
「母の心得」の章と「想い人の心得」の章はそれぞれ主人公が二人いるのですが、これは何か意味があるのかも知れません。
登場人物の名前つながるかなーと思ってやってみた
歩美→美砂→サヲリ
杏奈→奈緒
愛美→美奈→奈津→ツル
残念ながらつながりませんでした。(・へ・)
読めば読むほど奥が深いです。まだまだ気付いていないことがいっぱいあるような気がします。
「ツナグ」と「ツナグ 想い人の心得」の感想
前作「ツナグ」と最新作「ツナグ 想い人の心得」の両方の章ごとの題名が、「○○の心得」となっているのですが、心得って何?と思いました。何か意味があるのかも知れませんが、今のところ分かりません。
ツナグ(2010年11月刊)
アイドルの心得
主人公が会いたいと依頼した相手の「水城サヲリ」は、タレントの「飯島愛さん」がモデルになっているのではないかと思いました。話し方とか性格、死因、経歴などが似ています。
血も通わない赤の他人であり、ただのファンの一人でしかない「平瀬愛美」に会うことを承諾した理由が泣かせます。飯島愛さんの面影と重なり切なくなるお話でした。
長男の心得
主人公の畠田靖彦は、頑固で怒りっぽく周囲に分からずやと思われています。母や弟である久仁彦に対して思っている後悔の念を晴らしたく、母と面会を希望します。母は、そんな息子の気持ちを良く理解しています。
親友の心得
主人公の嵐美砂は、美人で負けず嫌いな性格。親友の御園奈津は美人じゃないけれど、人懐っこく部活の先輩に気に入られるタイプ。嵐は常に自分と御園を比べ、御園に対してライバル心を抱いています。
御園の死因に対する思い込みを確認したくて面会を希望するのですが…。嵐は、自分や相手を客観的に見るということが出来ない人で、思い込みの世界で苦しんでいる人です。
嵐のような部分は、私にもあるので、自分を客観的にみる良いきっかけになりました。
待ち人の心得
主人公は旅行に行くと言ったきり、失踪した婚約者を7年待ち続けています。日向キラリは不器用な生き方をしている10代の女の子。悲しく切ない結末で、やっぱり恋愛はハッピーエンドがいいですよね。
使者の心得
渋谷歩美と秋山家の関係、祖母アイ子から引き継ぎの最中の使者(ツナグ)の仕事ぶりや、かかわった依頼者とのストーリー。歩美の両親の死因などもここで判明します。
ツナグ 想い人の心得(2019年10月刊)
プロポーズの心得
主人公の紙谷ゆずるは、イケメンで浮気性の父親の血が流れていることを自覚しています。それでも嵐美砂に対しては純粋な気持ちを持っています。嵐美砂は、前作「ツナグ」で登場した人物です。高校時代演劇部で活躍した彼女は、社会人になって女優になります。
歴史研究の心得
主人公の鮫川幸平は、熱烈な上川岳満のファンです。歴史上の人物に会ってみたいという気持ちは分からなくはないです。私なら、聖徳太子に会ってみたいです。漫画「日出処の天子」を読んで面白かったので。聖徳太子は本当に超能力者だったのかなーって。
母の心得
重田実里は、幼い娘を水難事故で亡くし、小笠原時子は病気で娘を亡くします。重田実里は娘の死後、悪夢に悩まされます。小笠原時子は娘の死後、娘がかつていたことのある、かの地のドイツ語を学びます。共に、実際に家族を失った経験がお持ちなら、きっと共感できます。著者は、このお話を実在の遺族の方にお話しを伺い、書いたそうです。
一人娘の心得
主人公は、渋谷歩美の勤める会社の取引先である「鶏野工房」のオーナーの娘「奈緒」です。オーナーの父親が心臓発作で突然亡くなります。父親から技術を引き継ぐことなく残された奈緒は、悩みながらもしっかりと自分の人生の舵取りをしていきます。
想い人の心得
奈緒に想いをよせる渋谷歩美に、少々頼りなさは感じるものの、明るい未来を感じさせる終わり方でした。
もう一人の主人公の蜂谷茂は、桜の咲く頃に連絡が来る依頼人。彼の会いたい人は、若いころ奉公していた高級料亭「袖岡」の令嬢「絢子さま」。
身分違いの片思いゆえ、何度も何度も断られ、それでも会いたかった彼がお嬢様に見せたかったものとは?
話の内容はそれほど深いものではないのですが、目に浮かぶ風景や交わす会話が美しく、私は一番好きなお話です。
絢子が話す京都弁も風情があって素敵です。
「ということは、皆、きっともういはらへんのやな。お父はんも、お母はんも」
「もう、来てくれはる人は、待ってても誰もいはらへんのやな。あんた以外」
「おおきに。また桜が見られるやなんて、思ってもみいひんかったわ」
「ツナグ」に登場する死者は、死後に死んだ家族に出会えていないんでしょうか?
登場する死者はみな素敵な人たちなので、死後も幸せであって欲しいと強く思いました。
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