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「2030年の世界地図帳」落合陽一の書評・要約・感想

書評

「2030年の世界地図帳」は、2030年の達成を目標とする「SDGs」をテーマとした、テクノロジーや人口、貧困や格差、自然環境問題などにフォーカスして、今現在世界で起きている大きな流れを紹介しています。

落合陽一さんの紹介

メディアアーティスト。筑波大学図書館情報メディア系准教授、デジタルネイチャー推進戦略研究基盤代表、JST CREST xDiversity プロジェクト研究代表、大阪芸術大学客員教授、デジタルハリウッド大学客員教授と複数の肩書をお持ちです。

専門は、計算機ホログラム、デジタルファブリケーション、HCLおよび計算機技術を用いた応用領域(VR、視聴触覚ディスプレイ、自動運転や身体制御)の探求。

受賞歴

2015年 World Technology Award、2016年 Prix Ars Electronica、EUよりSTARTS Prizeを受賞。Laval Virtual Awardを2017年まで4年連続5回受賞。2019年 SXSW Creative Experience ARROW Awards受賞。2017年 スイス・ザンガレンシンポジウムより Leaders of Tomorrowに選出される。

 

↓以前ご紹介した落合陽一さんの記事。堀江貴文さんとの共著です。

「2030年の世界地図帳」の要約

はじめに
第1章 2030年の未来と4つのデジタル・イデオロギー
第2章 「貧困」「格差」は解決できるのか?
第3章 地球と人間の関係が変わる時代の「環境」問題
第4章 SDGsとヨーロッパの時代
おわりに

「2030年の世界地図帳」の構成

目次:

目次の部分は工夫されていて、章のタイトルの次に、その章で押さえておきたい内容が予め、簡単なまとめで示されています。

章ごとの内容:

図やグラフが豊富にあり、忙しい人でも目で見て大まかな内容が分かるようになっています。話のテーマの区切りの良いところで、数行のまとめが配置され、その後ろに出典元や注釈が書かれています。

落合さんが執筆した部分の他に、専門家との対談のページがあります。対談の相手は、安田 洋祐さん、池上 彰さん、宇留賀 敬一さんです。

「2030年の世界地図帳」を一言でいうと

国際社会は、「SDGs」の17の目標と169のターゲットに向けて動き出しています。達成目標は2030年。この各目標を読み解くことによって、2030年の世界がどのようになるのか。「SDGs」を手がかりに「2030年の世界地図」を見通してみる というのが本書の目論見です。11ページ

「SDGs」とは何か?

Sustainable Development Goalsの略で、「持続可能な開発目標」という意味です。

「持続可能な世界」とは?

今現在生活している私たちの要求を満たし、かつ、将来の世代が必要とする資産を損なうことのない社会のことです。その為に「SDGsの17のゴール」を掲げています。9ページ

要するに、この地球上で私たち人間はどうすれば生き続けられるのか、ということです。池上彰さん 317ページ

SDGsの17のゴール

1.貧困をなくそう
2.飢餓をゼロに
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
6.安全な水とトイレを世界中に
7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
8.働きがいも経済成長も
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任 つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう

17のゴールはさらに169のターゲットに細分化されています。

例えば、ターゲットのひとつ「2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる」とあり、具体的にいつ何を達成するのかが明確に定められています。

SDGsの17のゴールは、2010年の国連サミットで全会一致で採択され、2030年の達成を目指しています。

第1章 2030年の未来と4つのデジタル・イデオロギー

「テクノロジー」と「人口」がテーマ。

5つの破壊的テクノロジー

1.AIなどの機械学習関連技術
2.5G
3.自動運転
4.量子コンピューティング
5.ブロックチェーン

4つのデジタル・イデオロギー

アメリカン・デジタル

GAFAM(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)を中心としたアメリカのグローバル企業の動き

チャイニーズ・デジタル

国の強力な情報統制下にある中国のインターネットや、国の庇護のもとに成長したBATH(バイドゥ、アリババ、テンセン、ファーウェイ)などのグローバル企業の動き

ヨーロピアン・デジタル

IT分野以外の技術面で優れている製品やブランド力。例えばドイツのBMW、アウディ、ポルシェ、メルセデスベンツ、フォルクスワーゲン、ライカ、シーメンスなど。

サードウェーブ・デジタル

落合陽一さんの造語。インドやアフリカなど開発途上国を中心とした急速な技術革新のこと。例えば、インドのタタ・モーターズ、アフリカのケニアで普及している電子マネー「Mペサ」など。

2020年~2050年のテクノロジーの未来予想図

2025年 ロボット手術の普及、2028年 培養肉の商用化開始、2030年 空飛ぶ車の実用化、2030年 水素発電の商用化開始、2035年 バイオプリンティングによる再生臓器の製造など。

2024年 AIが同時通訳、2030年 AIによる専門職の代替開始、2035年 AIによる知的職業の代替など。

日本は世界の国々に比べて、若い人がとても少なく、年寄がとても多い。
2030年、日本では、国民の3分の1近くが65歳以上の高齢者となる。

アフリカやインドは人口が増え続ける。

現在、世界最大の中国の人口は、今後10年以内にピークを迎え、インドは2024年に中国を抜き、2050年までに生産と消費で世界を支える経済大国になると予想。

2030年のGDPは、1位 中国、2位 アメリカ、3位 インド

気になるキーワード:培養肉

今から8年後には、培養肉が商用化される予想です。細胞の培養によって、食用肉を生産します。牛や豚を殺さず食肉を製造するので、動物愛護になりますね。技術は既に確立されていて、現在は実験段階となっており、現在の価格は一口当たり数千万円となっています。

実際に食べたいか、というと正直あまり食べたくないですね。栄養面とか人体への健康面での影響とか未知数ですから。でも、動物を殺さなくてもお肉が食べられる世の中になるなんて、誰が想像したでしょう?

↓代替えタンパクのひとつ。昆虫食のコオロギプロテイン
人気記事:飲んだ口コミ・効果|イノセクト(INNOCECT)クリケットプロテインのコオロギの味は?

第2章 「貧困」「格差」は解決できるのか?

「貧困」と「格差」がテーマ。

極度の貧困、多次元の貧困に陥っている人はアフリカ大陸に集中している。

アフリカの簡単な経歴と、現在アフリカで起きているサードウェーブデジタルについて。

先進国の「相対的貧困」の深刻化。

格差を解決するための教育について。

気になるキーワード:アフリカの貧困とIT普及率

1日1.25ドル未満で生活している国(2015年)は、1位 中央アフリカ共和国、2位 マダガスカル、3位 南スーダン、4位 ブルンジ、5位 コンゴ民主共和国、6位 マラウィ、7位 ギニアビサウ、8位 ザンビア、9位 モザンビーク、10位 レソト

マダガスカル以外は、すべてアフリカ大陸の国々。

以前ご紹介したファクトフルネスでは、1日1ドルで暮らす10億人のうち、アフリカ諸国の人々の割合はその半分の5億人となっていました。統計年度や統計元が違うので、若干誤差はありますが、やはり、アフリカ諸国が世界で最も貧しい国々だということには変わりないですね。

アフリカの携帯電話普及率

2003年 10%未満、2009年 50%、2014年 80%、と急速に普及しているのが分かります。2021年にはアフリカの8割の地域で3G/4G回線が利用できるようになる見込みです。

アフリカでGDP成長率の高い国(2019年)は、1位 ガーナ、1位 南スーダン、3位 ルワンダ、4位 エチオピア、5位 コートジボワール、6位 セネガル

※ ちなみにインドの順位は、コートジボワールとセネガルの間です。

電子マネー「Mペサ」

ケニアの全世帯の65%以上が利用していて、1日の取引額は1億6200万ドル。ケニアでは、Mペサの取引額がケニアのGDPに迫る金額(2017年)と言われています。

貧困と技術革新が隣り合わせの不思議なエリア。アフリカ諸国。

ファクトフルネスでアフリカ連合委員会のズマ委員長が言っていた「50年もすればアフリカの人達は観光客としてヨーロッパに歓迎される存在になります。難民として嫌がられるんじゃなくてね。」というのは、きっともっと早く現実になりますよね。

第3章 地球と人間の関係が変わる時代の「環境」問題

「自然環境」が主なテーマ。

新しい技術開発

光触媒技術、人工光合成、メタンハイドレートなどは、現在コストが高すぎて実用には程遠い。

原子力依存度は、日本1%(2019年)、ドイツ13%(2016年)、フランス75%
日本は省エネ化が世界に比べて相対的に進んでいる。

RE100 … 事業運営を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる企業が加盟する国際イニシアティブ。

アメリカ、ヨーロッパ、中国のそれぞれの環境への取り組みについて。

太陽光パネルの世界シェアは、ほぼ中国が独占。

中国の世界制覇の目論見は、ファーウェイだけではないですね。

中国の一帯一路構想

2019年の二酸化炭素の排出量の世界一は中国です。中国の環境破壊がメディアで話題になりますが、この本では中国の環境問題への取り組みを紹介しています。中国がいろんな意味で世界に多大なる影響を与えていくだろうという印象をここでも強く受けました。

気になるキーワード:CO2濃度

地球温暖化の直接的な原因とされる二酸化炭素は、18世紀後半の産業革命以降から増え続けています。現在の地球の大気中の二酸化炭素濃度は、過去80万年で最も高い数値となっています。

これが人体に与える影響はどのようなものなのか?私達は自らの体で検証していくことになるのでしょうね。ちょっと恐ろしい気もします。どうやったら二酸化炭素を減らせるのか、グレタ・トゥーンベリさんじゃないけれど、真剣に考えたいと思う内容でした。

第4章 SDGsとヨーロッパの時代

「SDGs」がテーマ。

SDGsは毎年、国連持続可能な開発ソリューションネットワーク(SDSN)とドイツ・ベルテルスマン財団が各国の達成状況をスコア化し、ランキングを発表している。

2019年7月の、SDGsのランキング上位は、ヨーロッパの国々が独占している。この結果は、SDGsがヨーロッパにとって有利なルールであることを物語っている。(ちなみに日本は15位。)

今後、世界の国家と企業は、ヨーロッパ的な価値観のもと、その活動をヨーロッパ諸国に有利なシナリオのもとに規制されることになるのではないかと考えられる。288ページ

 

GAFAM(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)を規制するGDPR(EU一般データ保護規制)の歴史的背景など。

まだまだ盛だくさんの内容でした。ざっと駆け足で浅く読んでみましたが、読み終えるまでに1週間かかってしまいました。とても視野が広がる良い本だと思います。この本はまた後でじっくり時間をかけて読みたいです。

「2030年の世界地図帳」の感想

図や表が多いので、本の構成がどことなく、「ファクトフルネス」に似ているな、と思いました。読む前は、近未来についての落合さんの見解が一方的に書かれている本なのかなと思っていたけれど、読み終わった感想としては、それとは少し印象が違います。

将来のことが書かれているというより、知識や教養を深める本という印象を受けました。世界の現状がデータで示されています。そのデータを基に、世界が抱えている問題や、今起きていることに焦点をあてて書かれています。そして未来の可能性について言及されています。

本書を読み俯瞰しながら考えることを通じて、停滞や思考停止を突破し、各々の行動指針を立てるためのきっかけになれば、喜ばしい限りです。

24ページ

 

読者一人ひとりが、本の内容から自分で考え、自発的に行動するきっかけとなることを目的に書かれています。

世界情勢とか世界経済、時事問題とかを分かっていないと、本の内容は難しいです。専門用語のオンパレードで、理解するのに時間がかかります。もう少し注釈を詳しく書いて欲しかったと思いました。

SDGsをひもとくと、一見自分には関係がないように見えても、実はできること、そしてできないことがあると気がつくでしょう。多くの人に、自分には何ができるか主体的に捉えるという一歩を踏み出してほしいと考えています。349ページ

 

漠然と将来の不安にフォーカスしたり、自分の小さな世界のことだけを考えるのではなく、今世界で起きている事実を確認して、そこからもっと視野を広げて、当事者として自分たちは何が出来るのか?という前向きな視点で捉えることを、この本は促しています。

 

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この記事を書いた人
はづき

化粧品成分について、とことん調べるのが好きです。

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