仕事に疲れ果てた隆は、ある日電車のホームで、自殺しようとしているところをヤマモトという男に助けられた。「ちょっと今から仕事やめてくる」は、そんなヤマモトとの不思議な交流を描くハートフルなストーリー。
北川恵海さんの紹介
北川恵海さんの「ちょっと今から仕事やめてくる」は、デビュー作で、第21回電撃文庫小説大賞(メディアワークス文庫賞)を受賞した作品です。2017年5月に福士蒼汰さん主演で映画化され、2016年には漫画化。2019年6月には飯島寛騎さん主演で舞台化もされている人気作品です。
北川恵海さんは、コーヒーと紅茶、音楽とテレビが好きなインドア派だけれど、過去にオーストラリアやカナダなどで、働いていたという行動的な側面もあります。
↓北川恵海さんの作品
↓映画(DVD)
↓2019年7月25日発売の続編
「ちょっと今から仕事やめてくる」を読もうと思ったきっかけ
2019年7月に続編「ちょっと今から人生かえてくる」が刊行されていたことを知り、先に「ちょっと今から仕事やめてくる」を読んでみたかった。こんな有名な本なのに、私は、この本の存在を全然知りませんでした。(>_<)
「ちょっと今から仕事やめてくる」のあらすじ
9月26日(月)
10月10日(月・祝)
10月15日(土)
10月17日(月)
10月22日(土)
11月6日(日)
11月13日(日)
11月15日(火)
11月21日(月)
12月24日(火)
主な登場人物
主人公
青山隆…印刷会社に入社半年の営業職。仕事や職場の人間関係にストレスを抱えている。
ヤマモト…電車のホームで突然話しかけてきた同年代の男性。
隆の同級生
朱美…隆の学生時代の女友達。
橘先輩…大学アメフトのエース。就職して「サザエさんシンドローム」になる。
岩井一樹…隆の幼馴染。過去に「ヤマモト」という共通の友達がいたことを、電話で隆に教えてくれた。
山元健一…小学校3年生の時、岩井と隆と同じクラスだった。
ムラセン…隆の小学校の時の担任。サッカーの顧問。
隆の職場の人々
五十嵐先輩…一見優しいが、実は裏ですごいことをしている。
部長…いつも隆を目の敵にして怒鳴り散らす。
隆の得意先
小谷製菓の野田さん…隆の取引先の担当。
謎の人物
みぃ…山本純の知り合い。ネットでブログを書いている。
山本純…3年前に仕事を苦にして自殺した男性。
あらすじ
主人公の青山隆は、入社して半年になる営業マンだ。入社した会社はブラック企業。土曜出勤は当たり前で、仕事ではしょっちゅう部長に怒鳴られている。昨日は休日出勤、今日は、仕事帰りの電車を待っているときに、上司から携帯に電話がかかってくる。
隆は、めまいを感じ、ふわふわと気持ちよくなっているところへ、突然腕をつかまれた。線路に落っこちそうになったところを助けてくれたのだ。そいつはヤマモトと名乗り、親し気に話しかけてくる。ヤマモトは、隆の小学校時代の同級生だといい、それ以来、何かと隆の世話をやいてくれるようになった。
ところが、同級生の山元は、海外に住んでいることが判明。いったい彼は誰なのか?何のために隆に近づくのか?隆はヤマモトに詰め寄り、下の名前を聞き出し、インターネットで検索する。するとそこには偶然、ヤマモトに聞き出した名前の男性がヒットする。
その男性は、なんと3年前に仕事を苦にして自殺していた。その男性とヤマモトとの奇妙なある一致に驚いた隆は、ある行動を起こすが…
「ちょっと今から仕事やめてくる」の見どころ
実は私は、「ちょっと今から仕事やめてくる」を読み始めてすぐ5分くらいで、結末が知りたくて最後を読んでしまいました、でも結局結論がよく分からず、しょうがないので最初から順に読み進めたという経緯があります。
なぜあの時、あんなにこの作品に引き込まれていったのかな?とあとから振り返ってみると。
ヤマモトの正体が結局、最後の最後まで分からないというのが最大の理由です。場合によっては…。と最悪の事態を思わず想像してしまうのです。
それが、最後まで一気に読んでしまいたいという衝動に駆られた原因だなと思いました。
「ちょっと今から仕事やめてくる」の感想
「ヤマモト」というキャラがとてもいい味出してます。ちょっと切なくて泣ける本です。読んでたら、なんか、ヤマモトのしゃべり方が移ってきます。(^_^;)
「ホンマに久しぶりやなあ。小学校以来か。でもすぐわかったで。お前、変わってへんなあ」
ヤマモトは、歯磨き粉のCMのように歯を見せてニカッと笑うと、俺の右肘の上あたりを力強く掴んだまま、列の後ろの方へと移動し始めた。
これが隆とヤマモトの出会いです。( ´罒`*)✧ キラーン
歯がさわやかで印象的だったので、ヤマモトは、隆から「歯磨き粉」っていうあだ名をつけられます。ヤマモトは、一言でいうと、学生時代の友達みたいな人です。
初対面でいきなり親し気に声をかけられたら、普通は心を閉ざして、よそよそしく冷たい態度になるだろうと思うけれど、隆はまだ、若くて子供みたいに純粋で素直な性格なので、ヤマモトにおとなしくついていきます。
対するヤマモトも優しい性格なので、二人は仲良くなったんだな~と思いました。仕事にストレスを感じている隆が、ヤマモトに八つ当たりすることがなかったことも、この物語を素敵なものにしてるなーと思いました。
「おーいいねえ、今のツッコミ。コレあるんちゃう?」
ヤマモトは、自分の二の腕をパンパンと叩いて、ニカッと笑った。
二の腕をパンパンと叩くのはヤマモトの癖です。笑いの才能だったり、ウソつく才能だったり、その時によって意味が変わります。
「こんなどアウェイで、いきなり面白いことやってーとか、もうリンチと同じやで」
でも、「関西人やから面白い」っていうのは、ヤマモトにとってはプレッシャーに感じるらしい。
好きなシーン
「飲みたい気分じゃない時だって、あるだろ」
「なあんや。それやったら早よ言えよ」
で、向かった先は、
「この店やったら、飲まんでもゆっくりできるやろ。」
ヤマモトさん、あの、そうじゃなくて。(^_^;)
「マジで?じゃあ、ピザとパスタ頼んで分けようや!あっ、ポテトも食べていい?」
二人でワタリガニのトマトクリームパスタを半分こして~。ってOLの女子会やん!
でもええな~って。男二人で楽しそうやな~って。隆、ヤマモトみたいな、こんないいやつ、他におらへんでっ。(`・ω・´)
毎週のように会って、ヤマモトさん、そんなに食べてたら、隆が元気だすまでに、どんだけ太るか知れへんねー。
「隆にとって、会社辞めることと、死ぬことは、どっちのほうが簡単なわけ?」
そら、会社辞めることやろ!って思いますけれどね。
ヤマモトは、親身になって隆の話を聞いてくれて、会社を辞めることを何度もアドバイスします。でも、隆は真面目で純粋な性格なんで、辞めるという発想には、なかなかたどり着けないんです。他にも選択肢はいっぱいあるのに、自分で自分を追い詰めてしまうんですよね。
泣けるシーン
「心配やったから。…死んでしまいそうで」
「どうして、そう思ったの?」
ヤマモトは少し目を伏せ、小さく息を吸うと、ふうっと吐きだした。そして再び視線を上げると、俺を優しく見つめて言った。
「知ってたから。あの日のお前と、同じ表情してたヤツ」
ヤマモトのつらい気持ちが伝わってきて、泣けてくるシーンです。
残された家族は「助けてあげられなかった」という、重い十字架を、一生背負って生きていかなくてはいけない。
この小説の伝えたかったメッセージ。必要な人に届いて欲しいな、と強く思いました。
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